【再掲】マルセル・プルースト『失われた時を求めて』通読のための道しるべ

マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を読みはじめたが、あまりの長さに最後まで読み切ることができなかった、迷路にまぎれこんだようになった ― こうした話はよく耳にします。挫折せずに長編小説を読み進む、しかも味読する秘訣はあるのでしょうか。…

短歌・俳句におけるモノローグとディアローグ

草藉(し)きて臥すわが脈は方(ほう)十里寝(い)ねたる森の中心に搏つ 森鴎外 『鴎外全集』 我が足はかくこそ立てれ重心のあらむかぎりを私しつつ 森鴎外 同上 鴎外はドイツに医学留学し、日本の文化と異なる近代合理文明を知り、個人としての自我の確立を目指…

吉田健一とプルースト

吉田健一にはプルーストと共通する点が多くある。両者とも教養に富む恵まれた環境の中で少年・青年時代を過ごしたし、フランスの作曲家セザール・フランクを好み、ベートヴェンの晩年の室内楽にも惹かれている。また、絵画の黄金期のひとつである17世紀オ…

東京日仏学院を再訪する

東京日仏学院は1952年創立のフランス政府公認の語学学校・文化センターです。2012年にアンスティチフランセ東京と名前が変わりましたがフランスと日本の文化交流を図る施設です。 旧棟は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエに師事した坂倉準三が設計し1951年に…

吉田健一『金沢』の愉しみ ― 床の間と町

吉田健一の小説『金沢』には、内山という主人公が登場する。といっても、この内山、主人公と呼ぶには少々ふさわしくない人物だ。なにしろこの人物、「自分というものに固執することもなさそう」なのだ。吉田の世界では、たとえば『東京の昔』でも、自分のこ…

『失われた時を求めて』第6篇『消え去ったアルベルチーヌ』を読む

1. 恋人アルベルチーヌは突然マルセルと別れ、その出奔後に落馬事故に遭い、死亡する。主人公マルセルは絶望にかられるが、アルベルチーヌの真の姿を知ろうとして、彼女が生前に見せたさまざまな面を思い出しては、真実の追求を様々な角度から続ける。しか…

プルースト『花咲く乙女たちのかげに』の愉しみ

『失われた時を求めて』第二篇『花咲く乙女たちのかげに』の前半「第一部」は、第一篇『スワン家のほうへ』の続きであり、そこではスワンの結婚生活や、主人公とジルベルトとの恋が描かれ、古典演劇『フェードル』の観劇がそれに続く。 後半の「第二部」「土…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 目次

ピエール=オーギュスト・ルノワール 『ポン・ヌフ』wikipediaより シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 目次 (URLをクリックしてみて下さい) 1.ワシリー・カンディンスキー https://aushiba.hatenablog.com/entry/2024/11/02/2024542…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated > 9. 風神雷神図

最終回. 9. 風神・雷神図 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導かれて』 作品社 においても、ゴッホのアニメ化された…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 8. ピーテル・ブリューゲル

8. ピーテル・ブリューゲル 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導か…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 7. ヨハネス・フェルメール

7. ヨハネス・フェルメール 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導か…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 6 ピエール=オーギュスト・ルノワール

6. ピエール=オーギュスト・ルノワール 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 5. クロード・モネ

5. クロード・モネ 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導かれて』 作…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 4. グスタフ・クリムト

4. グスタフ・クリムト 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導かれて…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 3.アンリ・マティス

3. アンリ・マティス 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に導かれて』 …

拙書「受容から創造へ 文学・芸術に導かれて」へのご案内

2024年9月に発売された拙書「受容から創造へ 文学・芸術に導かれて」の目次です。第1章 日本文学 夏目漱石『こころ』 子規への返信 谷崎潤一郎 音曲の活用 永井荷風 もうひとつの『断腸亭日乗』 堀辰雄『風立ちぬ』に誤訳はあるか 村上春樹『羊をめぐる冒険…

シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 2.エラルタ美術館(ロシア・サンクトペテルブルグ)

2.エラルタ美術館(ロシア・サンクトペテルブルグ) 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容か…

新9回シリーズ <動きだす名画たち Masterpieces animated> 1. ワシリー・カンディンスキー

1. ワシリー・カンディンスキー 世界で制作された名画のアニメーションを紹介し、手短な解説を足してゆきます。 名画に隠されていた面が見えてくるかもしれません。 時代をさかのぼりつつ、毎月配信する予定です。 なお、拙書『受容から創造へ 文学・芸術に…

本が発売されました。

齢77にして ブログ『オルフェウスの歌』の増補改訂版が以下のように作品社から書籍化されました。 新たな書き下ろしも加えています。牛場暁夫著『受容から創造へ 文学•芸術に導かれて』1か月に1稿は結構ハードなペースでしたが、楽しくもありました。 今に…

もうすぐ・・・・・

ブログ『オルフェウスの歌』の増補改訂版が以下のように書籍化されます。 牛場暁夫著『受容から創造へ 文学•芸術に導かれて』 作品社 2400円(税別)近刊 これまで、心の中に紡いできたものが、ようやく生地に織り上がった心地です。 今回の出版が一番嬉しい…

はじめに 活発な読者として

学生時代から私は好きな本を何度も手に取っては、メモなども作り読後感想などを書きちらしてきました。定年後も折を見ては関連する書籍に目を通し続け、新たな知見も得てきました。しかし、私は次第に自分なりに考察したことを文書にまとめてみようと思うよ…

Ⅳ.立ち広がる新しい小説世界 「失われた時を求めて」 応答的創造のほうへ 4/4

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリン…

Ⅲ.ゲルマント公爵家と主人公の変貌 「失われた時を求めて」 応答的創造性のほうへ 3/4

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については次回本ブログにて…

Ⅱ. 恋人アルベルチーヌ もうひとつの愛 「失われた時を求めて」応答的創造のほうへ 2/4

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリン…

Ⅰ.「失われた時を求めて」 応答的創造のほうへ 1/4

私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリンク先をご覧くだ…

お勧めフレンチ・ア・ラ・カルト

芭蕉は江戸に旅立つ門人にはなむけとして、次のような俳句をひねりました。 梅若菜丸子の宿のとろろ汁 猿蓑 新春の道中には、梅もある、若菜もある。丸子の宿(静岡市内)ではおいしいとろろ汁が待っている。色彩豊かで味覚まで刺激されます。芭蕉の弟子を励…

創作 火の鳥

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリン…

書評 工藤庸子「プルーストからコレットへ いかにして風俗小説を読むか」(中公新書 1991)を再読する

数年前に読んだ本書を今回再読してみたが、残念ながらやはり論述の速さについてゆけない箇所がいくつか残った。著者の工藤氏は多数の引用を行うが、集められた資料は、時に狭い意味での風俗の事例として使われている。 結論部分でも、著者工藤氏は女性と性的…

永井荷風 もうひとつの「断腸亭日乗」

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリン…

越境する芸術・文化

2024年5月18日 私のブログ「オルフェウスの歌」の書籍化が決まりました。 書籍のタイトルは『受容から創造へ ― 文学・芸術に導かれて』です。 ブログ記事に手を入れ、新たに漱石論を書き下ろし、増補改訂版を編集しました。 詳細については本記事末尾のリン…