お勧めフレンチ・ア・ラ・カルト

 芭蕉は江戸に旅立つ門人にはなむけとして、次のような俳句をひねりました。

   梅若菜丸子の宿のとろろ汁    猿蓑

 新春の道中には、梅もある、若菜もある。丸子の宿(静岡市内)ではおいしいとろろ汁が待っている。色彩豊かで味覚まで刺激されます。芭蕉の弟子を励ます気持ちが伝わってきます。

 この名句ほど素敵で心温まる食の列挙はできません。でも、貧しい食体験からでも、私なりのめずらしい<お手頃フレンチづくし>を試みてみましょう。


 季節のガレット
 ソバ粉で作るクレープ「ガレット」。中には卵やハム、きのこやベーコンなどの具が入り、仕上げに塗られるバターが香ばしいです。 リンゴ酒の「シードル(Cidre)」を添えてみても、サッパリした感じの食事が楽しめます。リンゴ酒のアルコール度はたったの2%です。日本でも食べることができす。 
 Galette saisonnière. Une galette de crêpe réalisée avec cette farine de sarrasin.


オッソブーコ
 オッソブーコはミラノとロンバルディア州の代表的なイタリア料理の一つで、骨付き仔牛すね肉を厚さ4cmの輪切りにし、トマト、白ワイン、スープ、味付けした野菜、グレモラータで煮込みます。骨のズイにはコラーゲンがたっぷり!イタリア語で、オッソは「骨」で、ブッコは「穴」です。

https://www.thehouseofelynryn.com/2021/12/01/steak-au-poivre/

 ステーキ・オ・ポワブルは、粗挽き黒胡椒とコニャックをたっぷり使ったソースを添えたペッパー・ステーキです。 フライパンでフィレ・ミニョン(牛ヒレの先の部位)を焼きます。 ビフテキに飽きた時などにいかがでしょうか?もっとも、フランスの牛肉には脂身が少ないので、飽きが来ることはありません

https://www.cuisineaz.com/recettes/raie-au-beurre-noir-29028.aspx

 美しいエイヒレ、ソース用のバター、酢、そしてニンジン、タマネギ、ケイパーを添えて。「エイなんか食べられるのか」と思われるかもしれませんが、エイの肉は、柔らかく厚く、そこに焦がしバターが程よくしみて美味です。フランスは山の幸だけではなく、海の幸にも恵まれた国です。食材は多彩で、とても豊かです。日本とフランスの食料自給率は、それぞれ、38%と125%です。

https://fr.wikipedia.org/wiki/Fromage_aux_noix

 胡桃入りのチーズ くるみチーズはフランス産のチーズです。ナッツで飾られたプロセス・チーズで、特に年末に食べられるサヴォア(イタリア国境)の名物です。サヴォワ地方には、フォンデュというよく知られた料理もあります。これは、硬くなってしまったパンをチーズと一緒に溶かして食べたことから考案された料理で、日本でも一時期広まりました。


 イル・フロタントはフランスの伝統的なデザートです。直訳すると「浮かぶ島」という意味です。このデザートはバニラ風味のカスタードソースに浮かぶメレンゲが特徴です。 日本人にふるまうと、とても喜ばれます。作り方はとてもカンタン!

 フランスでは、日曜の昼食に招かれることが珍しくありません。長い時間をかけて、食事を、会話を楽しむためでしょう。最後のコーヒーが出て来るのが 四時になることもあります。そういえば、「食卓の愉しみ」という表現も使われます。食卓の名人のような人もいて、その人はよく食べ、よく飲み、よく味わい、よく話し、よく人の話の真意までも聞き取りますが、それだけでなく、話の合間に自分の意見を巧みに手短に表現します。長い食文化・歴史から生まれるタイプの人と言えるでしょう。偏らない豊かな知恵が日常のテーブルで発揮されます。そんな達人級の会食者と同じテーブルを囲むと、味覚の楽しみとともに、それはとても深い記憶になって残ります。素晴らしい土産話にもなることでしょう。
 では
 ボン・アべティ!「(たっぷりと召し上がれ!)

 そうそう、食後には、アイザック・ディーネセン原作の名作映画「バベットの晩餐会」(デンマーク 1987年)などいかがでしょうか。
 デンマークの寒村の牧師の信心深い二人の娘は、生きたウミガメやウズラに肝をつぶして、口にしようとしません。しかし、次第に、料理の魅力によって・・・。この名画には、「失われた時を求めて」で引用される、当時の有名なパリのレストラン「カフェ・アングレ」の女性シェフ「バベット」が主役をつとめ、そのすぐれた料理の腕前でもって、互いに硬く閉ざしていた会食者たちの心をほぐしてゆきます。グルメ映画ではなく、より深い人間的な訴えが秘められています。

≪番外編≫

めいたがれいの「エイヒレの焦がしバターソース添え」仕立て

 本編のメニューのうち、日本では普段手に入りにくい、エイヒレの代わりにめいたがれいを使って「エイヒレのソテー焦がしバターソース添え」仕立てをつくってみたところ、たいへん美味しかったので、番外編としてレシピをご紹介します。お魚は白身のすずきや鯛でも良いと思います。 是非、フランスの味をお試しください。

【材料】(2人前)
めいたがれいの切り身 2つ(すずき、鯛でもOK)
バター 20g
オリーブオイル 大匙2
小麦粉 適量
A バター 40g
A ケッパー(必須) 大匙2(量はお好みで)
A レモン汁 1/2個分
A 塩・胡椒 適宜
A あれば、刻んだイタリアンパセリ(又は万能ねぎの小口切り)適量

【作り方】
1. めいたがれいの水気を良くふき取り、塩・胡椒で下味をつける。
2. めいたがれいに小麦粉をまぶし、余分な粉ははたく。
3. フライパンにバター20gを溶かし、オリーブオイルを大匙3加える
4. めいたがれいの皮目から焼く。キツネ色に焼けたら裏返し、フライパンの溶けたバターをスプーンで全体に30秒間ほど回しかける(アロゼ)。裏側にも焼き色をつける。
5. 皿に盛り付ける。
6. Aの材料で、焦がしバターソースを作る。なるべくバターの色の見えやすい小鍋にバターを溶かす。中火で鍋をゆすりながら、注意深く色を見る。香ばしい茶色になったら、すぐに火から離してレモン汁を加えて焦げをとめる。更にケッパーを加え、塩・胡椒で味を調え、刻んだイタリアンパセリを加えて良く混ぜる。
7. ソースを魚にかけて供する。

焦がしバターソースが上手にできるとまるでバタースカッチのような香ばしさ。ソースの染みた魚も付け合わせの野菜もなんともいえない美味です。


                  編集協力 KOINOBORI8

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